平成25年度の日本弁理士クラブ幹事長に就任いたしました伊丹勝です。どうぞ宜しく御願いいたします。
年末年初の株価上昇、円安の影響からか日本の景気上向きの期待感が高まっております。しかし、まだまだ欧州の金融不安、途上国の台頭、東日本大震災・原発事故の影響、財政再建と様々な不安要因を抱え、日本の経済は、現状では、依然厳しい状況にあると言えるでしょう。そのような中で、iPS細胞の研究で京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞するなど、日本の科学技術にとって明るい話題も見受けられます。日本には、かつての右肩上がりの経済成長を支えてきた誇るべき「ものづくり」の技術力があります。いま、生命科学、ソフトウェア、再生可能エネルギー開発、ネットワーク、ソリューション等、これからの次代を担う新技術が日本の技術力によって開花し世界に浸透することが期待されています。この様な新世代を担う技術を日本発のイノベーションとして世界各国に 浸透させていくためにも、知財をグローバルにしっかりと保護していく必要があります。
我々弁理士には、産業財産権の創設というコア業務のスキルに一層磨きをかけることは勿論のこと、更にグローバルな視点での戦略的な知財保護の一翼を担うことが求められています。そのためには、弁理士の更なるスキルアップを図ると共に、弁理士がその能力を知財全般に亘って国際的に発揮できる制度的な環境を整備することが必要と考えます。折しも、現在、知的財産研究所では、弁理士法の改正に向けた調査研究活動が行われ、その報告書が間もなく纏められる予定です。これに基づき、本年度は産業構造審議会での議論がなされ、来年度は改正弁理士法が国会に上程される予定です。より良い方向で弁理士法の改正を実現するためにも、日本弁理士会の果たすべき役割は極めて大きいと言えるでしょう。
日本弁理士クラブは、PA会、春秋会、南甲弁理士クラブ、無名会、稲門弁理士クラブの5つのクラブによる連合体組織であり、66年にもわたる長い歴史と伝統があり、2千数百名の会員を擁する日本弁理士会で最大の組織です。これまでに多くの人材を日本弁理士会の役員に輩出し、多くの政策提言を行ってきました。日本弁理士会を人事面及び政策面で支えて弁理士制度、知財制度の発展に大きく貢献してきました。本年度も、弁理士法の改正を始め、知財制度の改革のために、日本弁理士会の会務運営をしっかりと支え、積極的な提言をしていきます。
昨今、クラブに所属しない、いわゆる無党派会員数がクラブ所属の会員数を大きく上回る状況になり、日本弁理士クラブの力だけでは、日本弁理士会の役員を執行部に送り出すことが困難な状況になりつつあります。しかし、知財制度、弁理士制度の改革は、我々自身が組織的にまとまって声を上げて行かなければ実現できません。日本弁理士クラブには、長きに亘って、日本弁理士会を人的にも、政策的にも支えてきた実績があります。このような日本弁理士クラブの会派活動を通じて次代を担うリーダも育成してきました。これからの若い弁理士が将来も誇りを持って弁理士の業務を続けて行く環境を整備するためにも、日本弁理士クラブが日本弁理士会の会務をしっかりとバックアップしていくことが必要なのです。
日本弁理士クラブを構成する5つのクラブは、それぞれの歴史的背景も文化も異なり、それぞれの個性を持っていますが、共通の高い理想のもとで大同団結し、日本弁理士会を支えていきます。また、日本弁理士クラブは、会派を超えて、弁理士にとって魅力あるクラブとなるように、様々な研修や交流の場、様々な情報を提供していきます。日本弁理士クラブの会員はもとより、会派に所属していない弁理士の方、これから弁理士になろうとする方も含め、日本弁理士クラブの活動に少しでも興味を持って頂き、より良い弁理士制度、知財制度の構築のための活動にご賛同頂ければ幸甚です。