幹事長ご挨拶
(21世紀への船出―天気晴朗なれども波高し)
日本弁理士クラブ平成13年度幹事長
野 本 陽 一
平成13年1月より新弁理士法ならびに新会則が施行され、弁理士制度が大きな変革を迎えました。しかも我が国弁理士制度を更に発展させていくためには、解決しなければならないテーマがまだまだ数多くあり、これらと懸命に取り組んでいく必要があります。平成13年度日本弁理士クラブ幹事会は、このような状況を踏まえ、「21世紀への船出―天気晴朗なれども波高し―」とのスローガンを掲げてスタートしました。日弁各派会員の先生方のご意見を仰ぎながら幹事会は一体となって会務を進めてまいりたいと思います。
まず日弁の第一の目的である「日本弁理士会の円滑なる活動への寄与」であります。本年も昨年同様正副会長会の方々と緊密に連係を保ち、日本弁理士会の活動が円滑かつ建設的に行われるように努力します。殊に弁理士法の第2次改正を的確に実現していくためにも「弁理士制度のあるべき姿」についての建設的意見の提言とこれに伴う積極的研究が重要であって、この点政策委員会の先生方のご活躍をお願いしております。
次に新役員制度への適確な対応です。本年より役員選挙の時期が11月に変わっただけでなく、常議員の定数が半減し、また総括副会長と監事の選挙が新たに加わりました。選挙のやり方を含め新しい視点から検討するべき事項が多々考えられます。協議委員会の先生方のご審議を踏まえて適確に対応しなければならないと思います。
更に日弁規約集の見直しであります。新弁理士法ならびに新会則の規定に照らして現行規約を改正する必要があるかどうか、必要な場合如何に改正すべきかを積極的に鋭意研究し、必要な改正をしてまいりたいと思います。殊に規約委員会の先生方のご協力を仰ぎたいと考えています。
ところで「日本弁理士会の円滑なる活動」に対して建設的かつ積極的に協力していくためには、日弁内の活動にとどまらず、外部の諸団体との円滑な交流が必要であろうかと思います。この点におきましては昨年同様に必要な時期を得て外部団体との必要な意見交換を図っていきたいと考えます。
優秀、かつ積極的な副幹事長、幹事の先生方と充分な意見交換を行い、各委員会の先生方のご協力を仰ぎながら一つ一つの課題をこなし、本年度日弁幹事会の活動を進めてまいります。日弁役員はじめ会員の先生方のご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。
ご 挨 拶 ─ルビコン河を越えて─
日本弁理士会会長 小 池 晃
日本弁理士クラブの皆様こんにちは。
日頃より、日本弁理士会の会務運営につき、大変な御協力をいただいておりますこと、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
お陰様で、副会長と一丸となって当初の事業計画の実現に向けて、着々と会務を運営しております。今年度は、昨年までに実現していただきました新弁理士法のもとでの新制度を的確に定着させることが重要であります。特に義務研修の実施は、施行留保となっております条項を一日も早く発動させるために是非とも必要です。当初の研修計画を前倒しして実行中です。新弁理士法が的確に機能するように八人の副会長とともに鋭意努力を重ねております。
今年度日本弁理士会の最重要課題は、第二次弁理士法の改正の実現、すなわち悲願の「侵害訴訟代理権の獲得」であります。しかし、この改革は、弁理士の願望だけで実現できるものではありません。社会の必要性と要請があってはじめて可能となるのでしょう。これ迄に積み重ねてきた諸先輩の努力が時代の推移とともに社会環境を動かしたのです。
「新しい国の形」の実現を目指した制度改革に向け、すでに「賽は投げられた」のであり、ルビコン河を越えたのです。
司法の場で、弁理士に求められる職責を十分に発揮し、社会の要請に応えて行く使命と責任があります。特許等の侵害訴訟代理人として、ユーザー等の信頼に応え得る能力担保をはかり、サイエンスマインドとともにリーガルマインドを磨き上げる責務があります。
五月の会員アンケートで、多くの会員諸氏からお示しいただいた、侵害訴訟代理権付与の条件としての「信頼性の高い能力担保措置」へのチャレンジの決意、熱い意気込みがルビコン河を越えさせたのです。
第二次弁理士法改正は、短期的に見ても、弁理士そのものの特質まで大きく変質させるものであり、中・長期的に見ても、輝かしく新しい時代に向けて進む弁理士制度の方向を決定づける大きな転換点と確信いたします。将来の弁理士制度を、一層拡充、発展させて行くため、この時点での能力担保の実現に一人でも多くの会員が果敢にチャレンジして行くことを願うものであります。
正副会長会も一つ一つの会務を進展するのに伴い、昨日よりも今日の絆が強くなってきております。過去を向くのではなく、将来を信じて、与えられた職責を任期一杯十分に果たせるよう努力して参ります。
どうぞ日本弁理士クラブの諸先生方におかれましては、これまで同様ご指導ご協力をいただけますようお願い申し上げます。
最後になりましたが、日本弁理士クラブ及び会員諸先生方の益々の御発展を願いつつ私の挨拶とさせて戴きます。
(2001年8月26日記)
ご 挨 拶
総括副会長 笹 島 富二雄
知的財産は人類を救うのではないのか
連続同時テロに対するタリバンへの集中攻撃がテレビに映し出されている。10月8日体育の日の早朝である。世界貿易センタービルへの旅客機激突とその後のビル崩壊の様子と共に、映画の虚構の世界としか思えない地球上の現実を目前にしている。
今日は何時まで続くか判らない辛く悲しい日々の始まりの日なのか。終わりの日の早く来ることを祈るのみである。
人智の富を築く筈の知的財産は、この戦争にどう生かされて行くのか。知的財産は人類の平和に貢献するのではないのか。映し出される子供の口に、今すぐ知的財産を頬張らせることは出来ないのか。やたらと腹立たしさがこみ上げるこの日である。
お蔭様で
お蔭様で三月に当選させて頂いてから、総括副会長としての弁理士会活動が、早半年程経過しつつある。未だ侵害訴訟代理権獲得活動の真っ最中である。それなのにもう次年度役員選挙の時期を迎えている。あと半年もない残りの期間を有意義に活動して行きたいと思っている。
侵害訴訟代理権獲得の奔流
現在、正副会長会の大きなテーマは言うまでもなく弁理士の特許権等に関する侵害訴訟代理権の獲得にある。日弁関係では、久保副会長がその責任者として、小池会長と共に、日夜交渉の前線でご苦労されている。
ご承知のように、本年6月に司法制度改革審議会意見書が提出され、「弁理士の特許権等の侵害訴訟(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る)での代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。」と提言された。将来の日本を案じ、司法制度改革に力を尽くそうとする政治家、司法行政、学者、国民等の大英断である。また知的財産制度のあり方を大局的・国際的立場から捉えて訴え続けた先輩弁理士の汗の結晶でもある。我々後輩は、この奔流に乗り、大切に終極の目的に向かって制度構築に邁進する責務がある。
信頼性の高い能力担保措置の為の研修のあり方は、「能力担保措置ワーキンググループ」で鋭意検討中である。本稿ではこれらの詳細は久保副会長が紹介されるであろうから、割愛させて頂く。
私が申し上げたいことは、次のようなことである。
「訴訟代理権」を育てよう
前掲ワーキンググループの結論が如何に出ようとも、弁理士が、「特許権等の侵害訴訟における代理権」を獲得することは疑いもなかろう。しかしその代理権は、「弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る」制限付きのものである。これに沿って、弁理士は弁護士と複数代理人を構成し、民訴法上の原則に従い、個別代理権を保有することになる。現在論議されている弁理士の単独出廷権については議論の外に置くとして、少なくとも弁護士との共同出廷時においては、弁理士は法廷において独立した陳述権を有し、弁護士と略対等の代理人となる訳である。これまでの弁理士の補佐人としての地位とはここが格段に相違する点の一つである。
もし弁理士が代理人として相当の能力担保を図って出廷するのであれば、知的財産に関し充分な知識を有する弁護士と共同出廷した場合、弁護活動は飛躍的に向上する筈である。また、あいにく知的財産に関し充分な知識を有さない弁護士と共同出廷するようになっても、弁理士が主導権を握ってその侵害訴訟を遂行出来る訳である。
訴訟形態はまさしく多様である。当事者は個人から大企業まであり、また国籍も多様になる。弁護団も最小構成(2人)から大弁護団に至るまであるであろう。そこにおいて侵害訴訟代理人としてユーザーに選択されるには、弁護士も弁理士もない、実力の世界があるに過ぎない。
弁理士が将来単独訴訟代理権を獲得することは望むところである。弁護士の代理する事件において弁理士の単独出廷権の拡大も重要である。しかし今我々に与えられようとする訴訟代理権の範囲内で充分弁理士は力を発揮出来るし、むしろ発揮する為、充分な能力向上に努めるべきである。
知的財産権関係の訴訟事件の充実・迅速化については、各国とも知的財産を巡る国際的戦略の一部として位置付け、これを推進するための各種方策を講じている。弁理士は産業経済発展を目的とする資格である。その主たる日常業務である知的創造サイクルの末端の紛争処理手段として、弁理士が司法の世界に参入するのは極めて意義の深い、重要なことであり、将にユーザーが期待するところである。この点、紛争処理専門の世界に生きる弁護士と根本的に相違する。
このようなことから、明年度以降に予定される能力担保の研修に多くの会員が挑戦し、侵害訴訟代理権を取得し、育て、弁理士の訴訟代理人としての特有の世界を構築し、必要なら弁護士と協力して、世界に通用する知的財産の人的インフラとして期待に応えたいものである。
分 掌
総括副会長としての分掌は、全般関与ということで余り任されているものはない。一つには、本年度新設された外部意見聴取会の担当であり、他には特技懇との懇談会の担当とされている。
前者は会則に基づき、日本弁理士会の運営に関して委員の意見を求めるものである。委員としては、荒井元特許庁長官、馬場元読売新聞論説委員等、5名の外部有識者にご出席頂いている。極めて有意義な示唆に富んだ意見に触れるのが毎回楽しみである。特技懇との懇談会は、審査・審判官及び弁理士に共通な実務上の課題を設定し、両者から発表者が立ち、議論を重ねるといった、かなり研究的性格の強いものになっている。
司法制度改革関連
最近になって、侵害訴訟代理権以外の法改正項目を含む司法制度改革に関する改革運動の命を受けた。司法制度改革審議会の意見書の趣旨に沿い、司法制度改革推進法が今国会に上程され、これに基づく司法制度改革推進本部が発足する。いよいよ司法制度の改革を推進する体制が出来つつある。ここでは隣接法律専門職種の活用等も議論されるが、弁理士法の改正は監督官庁の特許庁が前倒しで行うため、弁理士法改正の関連は議論しないということになっている。
しかし知的財産の関連では、日本において著作権を一体誰が担うのか、弁護士だけで良いのかと考える時、特許等の工業所有権の専門家である弁理士もその一部を担うのが国策上望ましいものである。弁理士法でいう特定不正競争行為の制限は適当なのか、裁判外の紛争処理(ADR)も弁護士法72条の見直しを図って弁理士等の隣接法律専門職種の専門性を活用する等の方策も採られなければならない。
これに対しては、各委員会で専門的に検討を重ねて来ているが、ワーキンググループ的な会議を作って、総合的な戦略を練るような段取りに入った。
その他、支援センター、防災会議等、重要検討課題があるが、この辺で留めておき、またの機会に譲りたい。
国際性
弁理士の大きな特徴の一つは国際性である。スイスのリューリッヒ工科大学とこの四月に交流を持つことになった。学生25人程が来日して10日程勉強して行く。その窓口を勤めるのも総括副会長の仕事である。
以上種々近況を述べてご挨拶に代える。今後とも宜しくご支援をお願い申し上げるものである。
以 上
若干の会務報告
日本弁理士会副会長 井 上 義 雄
日本弁理士クラブの皆様には、何時も大変お世話になります。
一昨年あたりから、私の個人業務の多忙さは皆様同様すさまじく忙しく正に限界への挑戦と思って頑張っていたところでありましたが、昨年の夏前の何時頃か副会長の声がかかり、何かその忙しさの延長上に身を置いた気がします。
日本弁理士会にあっても、一昨年度あたりから弁理士法第一次改正の動きが急ピッチになり一昨年度はその立法化に向けて、そして昨年度はその施行に向けての諸作業はどれほどのものであったかと、今この原稿を書くために昨年度の「日弁」を見て改めて思っているところであります。
昨年から今年にかけて、次年度予算検討委員会に参加して、日本弁理士会の諸活動等を勉強し始めたのですが、わずか数年前に独立してそれ以来会の活動を離れていた小生にとっては、浦島太郎の気分でありました。本年3月末の慌ただしい日の中を、AIPPI総会の前日メルボルンで開かれた日本弁理士会スポンサーのIP専門家会議にオブザーバーとして参加して、その何ともどたばたとした感じで準備され慌ただしく開催された会議ではありましたが、全く驚くほど成功裏に終わったのは、村木前会長率いる日本弁理士会の時期を得た呼びかけおよび訴えと、場所を提供しかつ色々協力してくれたFICPI会長のお陰であったと考えているところであります。正直なところ、このメルボルンへの旅行でようやく自分の時間を取れた小生は、オーストラリアへの機中で今年印刷された新制度の弁理士法関係法規集をやっとじっくり眺めることが出来た次第であります。
4月2日から2001年度日本弁理士会正副会長会が小池晃会長の下スタートした。桜の花をかいくぐりあちらこちらと挨拶回りをしつつ、新会則の下での諸活動および総会に向けての準備が始まった。小生の担当は、会員問題、選挙管理委員会、国際活動委員会、バイオ委員会である。常議員会、それに続く総会を控えて取り敢えずは、選挙関係の規則を勉強しなければならなかったが、時間がなく、さらには多岐にわたる国際問題も勉強せねばならず、特に国際問題についてはその中身の概要を全てにわたって理解するにはずいぶん先になってしまった。その間にも、司法制度改革審議会関係についての諸活動は、急ピッチで進められ、小生も右往左往しながらも何とかついていった。
6月13日には司法制度改革審議会の意見書が出され、「弁護士が代理している」と「信頼性の高い能力担保措置を講ずる」こととの二つの条件はつくものの「特許権等の侵害訴訟での単独出廷可能な代理権」獲得の途が開かれ、今その具体的法整備の直前にきたところです。
この第2次弁理士法改正は、今回の司法制度改革の一貫として行われるものであり、司法制度改革を必要とするユーザー即ち国民の期待を裏切ることがあってはならないとういうこと、および知的財産戦略は21世紀に我が国が進んでいく国家戦略であるということを前提にして、「特許権等の侵害訴訟」に弁理士が必要かつ十分にサービスできるように立法化されねばならないと考えます。すなわち、立法化にあたっては、弁理士に上記二つの条件以外の条件や制約が課せられてはならず、「特許権等の侵害訴訟」については弁護士と同等に法的サービスできる立法化でなければならないと考えます。そうでなければ、使えない、あるいは使いにくい訴訟代理権になってしまい、司法制度改革の要求する意図に反すると共に、我が国知的財産戦略にとって後ろ向きの事態を生じさせることになってしまうと考えます。
例えば、弁理士の関与できる範囲や分野にしても、「特許権等の侵害訴訟」に漏れや不自由なく関与できる範囲でなければならず、あまり限定的では司法制度改革の意図に反することになってしまうと考えます。また、例えば秘密保持等の、特権や義務にしても、弁護士と同等のものでなければ、せっかくの訴訟代理権も実際的には使いえない、もしくは使いにくいものになると考えます。
即ち、第2次弁理士法改正は、実際の要求に十分に使える制度を構築すべきであり、そのためには「特許権等の侵害訴訟」の代理に関し、弁理士は上記2つの条件以外は弁護士と同等であるように法整備すべき問題であると考えます。このようにすることは、米国における特許等の訴訟で問題になっている守秘義務特権にも、我々弁理士にとって、またクライアントにとってもきっと良い影響をもたらすことになると考えます。
ところで、現弁理士法は2000年(平成12年)3月21日の第147通常国会に提出されましたが、同年3月30日参議院経済産業省委員会で全会一致で採決された付帯決議の第2項では
「今後の弁理士制度の検討に当たっては、知的財産権の国際的情勢の動向にかんがみ、我が国企業の機密事項が外国の裁判においても保護されるよう適切な方策を検討すること。」
と記載されています。今度の第2次弁理士法改正はせっかくの機会でありますから、この付帯決議をも生かす形で立法化されれば、より有効な立法化になると考えております。
ところで、日本弁理士会は本年11月13日(火)ローマに於いて第2回IP専門家会議を10数カ国のIP専門家と共に開催し、知的財産に関する訴訟におけるIP専門家の役割、およびIP専門家の守秘義務特権について参加各国の報告および議論をすることになっております。小生はこの会合で、来るべき法改正の話でも報告してきたいと考えております。
以 上
侵害訴訟代理
日本弁理士会副会長 久 保 司
弁理士法の第2次改正としての弁理士の侵害訴訟代理の問題は夏を過ぎて佳境に入ってきた。平成13年6月12日に司法制度審議会の意見書が提出され、これを受けて同7月2日に司法制度改革準備室が設立され、ここで秋の臨時国会に提出される司法制度改革基本法案の作成が行われ、3年以内の司法制度改革の実現に向けて50余りの法案が走り出すと聞いている。
我々弁理士の侵害訴訟代理付与に関しても、弁理士法の改正として来年2月の通常国会に提出されるべく着々と準備が進められている。
現正副会長のうち、私はこの弁理士法の第2次改正の担当の副会長として、小池会長のもとで、日々特許庁等の外部機関との意見交換、正副会長会、委員会等の弁理士会内の打ち合わせに追われている毎日である。
ところで、司法制度改革審議会の意見書では、弁理士への侵害訴訟代理の付与は、知的財産権関係事件の審理期間を概ね半減させるとの目標の下に、裁判の専属管轄化を含む総合的な対応策の一環として、技術的知見を有する弁理士の専門性を活用するためとされる。
そして、弁理士の侵害訴訟代理付与に関しては2つの条件が付けられ、その1つは弁護士が訴訟代理人となっている訴訟事件に限定されるものであり、2つ目は信頼性の高い能力担保措置を行うことである。
この信頼すべき能力担保措置の内容は、平成13年6月18日に出された特許庁からの「これからの知的財産分野の研修のあり方を考える懇談会」の報告書によれば、訴訟代理権の取得の意欲を有する弁理士を対象として、研修及びその効果確認を主たる目的とする試験で構成すべきであるとしている。
ところで前記報告書によれば、研修の骨格等は国(特許庁等)が定めるとされ、また、研修の実施主体は日本弁理士会としつつ、研修の実施事務については外部機関を活用する等実施の態様に柔軟性を持たせ、弁理士が受講し易い研修とすべきであるとされる。さらに、研修の効果確認を主たる目的とする試験は、国が実施すべきであるとされる。
日本弁理士会としては、このような信頼性の高い能力担保措置の内容を考える前提として、司法制度改革審議会の意見書の内容、および、特許庁のこれからの知的財産分野の研修のあり方を考える懇談会の報告書の内容を尊重することにしている。
司法制度改革審議会の意見書を尊重することは、そもそも弁理士への侵害訴訟代理の付与は1昨年の弁理士法の改正の際の附帯決議の内容にも明記されたことであり、当然のことである。
また、特許庁のこれからの知的財産分野の研修のあり方を考える懇談会は、裁判所、学者、ユーザー代表、日弁連、ジャーナリズム、法務省、文化庁等の官庁その他の有識者を集めた懇談会であり、当然、弁理士会も会長がメンバーとして参加していたものである。
研修の骨格等は国が定めるとされることについては、その骨格等が合理的理由にかなったものであれば、日本弁理士会としてはそれに異を唱える理由はない。
また、研修の効果確認を主たる目的とする試験を国が実施すべきであるとすることについても、研修の資質の担保と侵害訴訟代理を行うに適するという認定の公正さを確保するためには、適正のことと考える。
ところで、研修の内容については、弁理士が特許権等侵害訴訟の依頼人の期待に応え、また裁判の審理期間を概ね半減させるという目標の実現にも貢献するには、訴訟実務を遂行するに足る能力を身につけることが必要である。
そしてこれを考えるに、司法修習のうち特許権等侵害訴訟に関連する部分を参考にしつつ、民事訴訟に関する実務的なものとすべきであり、研修の時間数等については、弁理士が弁護士と共同受任の事件において代理人となることを踏まえ、これに必要な範囲内のものとすべきとされる。
ここで、弁護士と共同受任ということについては、司法制度改革審議会の議事録によれば、「裁判所の現場では共同出廷を望んでいた」という藤田委員の意見に対して、竹下会長代理の意見を踏まえて、「代理権については信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、単独での出頭を含めこれを付与すべきである。」ということが確認されている。
単独での出頭(単独出廷)と信頼性の高い能力担保措置とが結び付くとすれば、この能力担保措置の内容は単独出廷に耐え得るだけのものということになり、しかも、裁判の専属管轄化を前提として知的財産権関係事件の審理期間を概ね半減させるとの目標の下に、今までのような準備書面を持ち帰り作成することを前提としたものでなく、公判で口頭審理での即決判断を必須とするものとされるとすれば、司法修習のうち特許権等侵害訴訟に関連する部分を参考にしつつ、民事訴訟に関する実務的なものとすべきであるとされることは当然のことである。
具体的には、民事訴訟法、民事訴訟実務(要件事実概論、証拠収集と立証等)に関する講義に加えて、模擬事例を用いた訴状、答弁書、準備書面、損害額の認定等の起案を含む演習形式の研修が考えられる。
また、受講者のレベルとしては、能力担保措置としての研修が実効を上げるためには、受講者が民法や民事訴訟法に関する基本的知識を修得していることが必要であり、民法・民事訴訟法等の基本的知識の修得は、大学での科目履修等を参考に、現在日本弁理士会が大学等に打診して自主的な会員研修を実現すべく検討中である。
なお、研修の時間数等については、弁理士が弁護士と共同受任の事件において訴訟代理人となることを踏まえ、これに必要な範囲内のものとすべきである。すなわち、弁理士には、その専門知識を生かしつつ、法廷における訴訟手続を弁護士と協力しながら進めることが期待されることから、研修もそれに相応のものとすべきである。
研修の時間数についてここで個人的な見解を述べると、次のようになる。
ちなみに、司法修習を参考にした場合、司法修習は全部で1年6ヵ月で、そのうち1年は実務修習であり、残りの6ヵ月が集合研修である。これが、前記、後期で3ヵ月毎に分かれ、科目としては民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目である。もとより、司法修習は弁護士のみならず、裁判官、検事も養成するものであるから、我々弁理士の侵害訴訟代理に関しては、このうち、民事裁判、民事弁護が参考になるとしてその2つは大ざっぱに約250時間程度であり、しかもここから民事弁護および共通科目のみを取り出すとすると約160時間程度である。
この約160時間の民事弁護を中心にした内容のうち特許権等侵害訴訟に関連する部分を参考にしつつ、弁理士が弁護士と共同受任の事件において代理人となることを踏まえ、これに必要な範囲内のものとした場合の時間は自宅起案をふくめて80~120時間程度と考えられる。
また、日本弁理士会のアンケート結果によれば、訴訟代理人となることを望んでいる弁理士からは、土日開催や夜間開催等、研修の柔軟な実施態様に対する強いニーズがある。現在アンケート結果によれば、訴訟代理人となることを望んでいる弁理士は回答者の約8割以上であり、その中でも早急に希望するものは800~1,000程度と推測され、このため、研修の実施主体を担う日本弁理士会としては、それに答えるべく、講師の手配や研修の実施事務については検討を重ねている段階であり、外部機関を活用する等その実施態様に柔軟性を持たせることにより、全国各地で活動している弁理士が、研修時間・場所等の面で受講し易い研修とすることも考慮するつもりである。
このようなことから、正副会長会は弁理士の侵害訴訟代理の獲得について努力を重ねているが、そもそも弁理士の侵害訴訟代理の獲得はわれわれの職域拡大というエゴ的な要求ではなく、社会の要請の結果であり、信頼性の高い能力担保措置ということに関しても社会の要請に耐えうる能力を身に付けるよい機会を与えられるとの認識をもって真摯に考えて行くべき事項であると思っている。
どうか、日頃親しくご指導いただいております日弁の先生方には、正副会長の活動をご理解、ご支援頂きたくお願い申し上げる次第である。
以 上
正副会長会報告
日本弁理士会副会長 牛 木 護
はじめに
激しかった副会長選挙を勝ち抜き、3月1日の祝賀会で、おいしいお酒をいただいた翌日から、疲れを癒す間もなく、早速実質的な次年度の準備が始まった。厳しかった選挙のことは振りかえりたくはないが、これから出てこられる方々のために、一言触れさせていただきます。私は、他の候補者のように候補者個人のホームページを開いたり、全会員に対し、メールや葉書で呼びかけたりしなかったが、近年の合格者急増や若い会員の無会派化の傾向からみて今後は全会員に向けた選挙運動は不可欠と思った。
統合、新設された委員会
小池会長の方針として、総務、財務、情報企画委員会などいくつかの委員会が統廃合され、その代わり、弁理士倫理、著作権、ライセンス、発明等評価委員会などが新設された。これらの委員会の新設理由は新弁理士施行年度にふさわしく、拡大された新業務に対する取り組みの姿勢を会員に認識してもらい、かつ外部にアッピールする事にあった。新設された委員会への希望は多く、定員を超えた。
私の主担当である弁理士倫理委員会では弁理士倫理のガイドラインを検討してもらっている。この中で、利益相反に関する規定は会則31条の規定が前提となっているが、会則全体のガイドラインは昨年度から総合政策検討委員会で検討されている。しかし、会則31条で規定する利益相反の事件の中に出願を含むか否かに関しては結論が出ていないので合同委員会を持ってすりあわせながら進めているが今のところ結論が出ていない。
発明等評価委員会はこれまで特許委員会で検討してきた特許権などの評価研究に関する諮問事項をTLOがらみで要請されているテーマであることから弁理士会でもイニシアチブを取っていこうと意図から創設された。
著作権委員会、ライセンス委員会は業務拡大された契約の代理業務に対応する為で既存の特許委員会、意匠委員会、ソフトウエア委員会、商標委員会と役割を分担している。
弁理士法二次改正に向けた動き
司法制度改革審議会の意見書が出た後、政府の推進準備室の開設、特許庁能力担保研修ワーキングループの立ち上げ、法改正審議室との協議とあわただしい。能力担保研修の具体的なスケジュール、内容について正副会長会と法改正委員会で検討している。
次に、1次改正で拡張された新業務について、いわゆる義務研修が始まっている。新業務に関しての義務研修を会としては特例者を除き全員に受講してもらい、新業務を早く施行させたい。
2次改正に関連しては、9月段階ではワーキンググループ会合にあわせて、侵害訴訟代理人能力担保の為の研修科目、時間数、時間配分など具体的な研修計画のつめをおこなっている。内部的には法改正委員会や3派との調整、外部的には特許庁との折衝が繰り返されている。また、会員の意見を聞く説明会が全国規模で展開されている。
専門委員会等の活動状況
特許庁産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会ではコンピュ-タープログラムに対する特許法保護の論点整理、ネットワーク上での電子出版物等の流通やサービス活動の実態に対応した特許権等の適切な保護のあり方を検討しており、本会より谷義一会員を委員として送り出している。特許委員会などの専門委員会では谷委員と定期的な事前打ち合わせ、本会としての意見が反映されるように努めている。9月27日に開催された第6回法制小委員会では議論のまとめが行なわれた。その要点は、①発明の定義は弾力的に解釈し、ソフトウエア関連発明の特許適格性を広く認める運用を行ない改定しない。②保護対象の分類(カテゴリ)は据え置くが、対象とすべき実施行為については新たな発明の実施形態である占有の移転を伴わないネットワーク上の送信行為を現行法の譲渡では読めないので提供又は供給などに改定する。③現行の間接侵害規定を改定し、主観的要件を導入し客観的要件を緩和する。④出願人による先行技術情報の提供については、開示義務を現行の訓示義務規定を拒絶・無効理由とする。⑤PCT翻訳文の提出期間の延長に関しては本会の要望書が容認されて国内書面提出後2月以内に翻訳文を提出できるように特許法が改定される。これらの改定は弁理士法2次改正案と共に来年2月の通常国会に上程される予定である。
(財)知的財産研究所による審判制度と侵害訴訟の将来像に関する調査研究委員会と画像デザイン保護に関する委員会などにも本会より委員を送っています。各委員と特許委員会と意匠委員会も定期会合を行なっています。知財研の委員会報告はその多くが法改正に直結する重要事項であって関係団体として目が離せないものといわれており、今回の両委員会調査研究テーマも我々の実務に直接関連する課題であり、しっかりと見届け、本会としての意見をはね入させねばなりません。
おわりに
今年度は連合弁理士クラブ出身の小池会長の下、8名の副会長は和気藹々とお互いの立場を尊重しながら、会務に精を出しています。小池会長は各方面に気配りをしながらも結論を出すべき時には強いリーダシップを発揮しており円滑な会務運営に努めています。
8名の副会長もスタート時点では、激しい選挙直後の事もあり、多少ギクシャクしたところもありましたが、約半年経った現在では角も取れ円満にやっております。後半年の間それぞれの職責が大過なくまっとうできます事を願って、ご挨拶を終わらせてもらいます。
日本弁理士会に新しい息吹を
日本弁理士会副会長 牛 久 健 司
社会的活動の拠点
弁理士会館1階の拡充
去る5月25日の定期総会において、(財)特許情報機構の移転に伴って空室となった弁理士会館1階西側部分を賃貸借する議案が承認された。弁理士会館1階の全フロアを、日本弁理士会の社会的活動の拠点として拡充した。具体的には、日本弁護士連合会との共同事業である日本知的財産仲裁センターの新事務室、相談室、応接室、日本弁理士会の知的財産支援センターの新相談室、同支援センターおよび新しくできた広報センターの一部事務室、応接兼会議室、そして会員待合室が実現した。
7月2日は新装オープンし、祝賀式と記者発表を行った。
日本知的財産仲裁センター
工業所有権仲裁センターは日本知的財産仲裁センターと改称し、幅広く知的財産全般(著作権、JPドメイン名を含む)の迅速かつ安価な紛争解決をめざす。いくつかの問題点がある。
その一つは、調停、仲裁事件数が少ないということである。一般的に言えば事件数が少ないのは世の中が平和であるからであり、何ら憂えることではない。仲裁センターの取扱い事件数はよく特許庁の判定請求件数と比較される。判定請求件数は1年で倍増し、平成12年度は175件であり、これに対して仲裁センターの取扱い事件数は年間数件である。私が不思議に思うのは、なぜ判定請求件数がそんなに多いのかということである。判定に何を期待しているのであろうか。根本的な問題は仲裁センターに弁理士が申立る事件が殆ど無いということである。新弁理士法の下では仲裁代理ができるのであるから、弁理士にも調停、仲裁に積極的になって欲しいと思う。
新弁理士法との関連で言えば、問題は、弁理士は著作物に関する仲裁事件の手続の代理ができないことである(第4条第2項第2号)。弁理士は著作物に関する仲裁事件の仲裁人にはなることができる。仲裁センターの一方の共同事業体である日本弁理士会の会員が特定の事件について仲裁代理ができないのはあまりに不便である。
もう一つの深刻な問題は著作物に関する仲裁事件の仲裁人候補になり得る能力を持つ弁理士を養成していかなければならないことである。著作物に関する権利の契約の代理ができるようになるのであるから、大いに実務を経験し、研究し、仲裁人候補に多くの弁理士がなって欲しいと思う。
知的財産支援センター
本年2月6日に日本弁理士会は島根県の地域産業振興に貢献するという協定を島根県と結び、支援センターが中心となって6月から知的財産戦略セミナー、演習、相談会等を始めた。地方行政との連携は初めての試みである。島根県のセミナー等には100人近い参加者があり、毎回大盛況である。インターネット、電子メールを利用した相談システムの構築も考えている。
支援センター、支部、地区部会が中心になって弁理士の日を記念して実施している全国一斉無料相談会は今年で3回目を迎えた。本年は7月7日(土)に34ヶ所で行い、参加した会員は150名を超えている。この催しは日本弁理士会をアピールし、弁理士の存在を世に知ってもらう好機である。
広報センター
広報委員会を改組し、新しく広報センターが設置され、日本弁理士会の一元的な広報活動を展開する。
幅広く新委員会を設置
小池会長のキャッチフレーズ「統合と分散」の下にかなりの数の委員会が統合されたが、1月6日に施行された新弁理士法、新弁理士会会則の下での新制度、拡大された業務に対応するために新しい委員会も設置された。
著作権委員会
新しく業務に加わる著作権等に関して研究を行い、その成果を会員にフィードバックするとともに、日本弁理士会の考えを対外的にアピールする基礎をつくることを任務とする。既に文化庁、著作権情報センター、日本音楽著作権協会、ソフトウェア情報センター等の著作権関係団体とも接触を持ち、その活動を展開しつつある。(パテント8月号第3頁「著作権に慣れ親しもう」を参照)
ライセンス委員会
ライセンスを含む契約業務は特許、意匠、商標、著作権等の全般にわたるとともに、個別的諸問題を含んでいるが、この委員会ではそれらを包括的に取扱い、会員のリーガル・マインドを高めていく。
発明等評価検討委員会
発明、特許権、その他の知的財産権の経済的価値評価はライセンス、売買、担保、資産等さまざまな場面で必要となるとともに、出願前、出願中においても評価が求められる。弁理士はこれらの価値評価に最も近い位置にいるにもかかわらず、その実践への指向が稀薄であった。
社会的なニーズを充分に調査検討し、日本弁理士会または弁理士が何をなすべきか、何ができるかという観点から具体的方策を導き出していく予定である。
弁理士倫理委員会
弁理士倫理(会令第36号)が施行され、その実現が問われている。また、弁理士倫理に関する研修の実施も必要とされている(会則第58条)。このような情況に鑑みて、この委員会には弁理士倫理のガイドラインを早急に作成することが要求されている。
新制度の下で
新組織
執行機関としての正副会長会、委任状制度等を取入れた総会、審議機関としての常議員会、監査機関として外部監事を含む監事会、執行補佐役、外部意見聴取会、外部委員を含む登録審査会、防災会議等、新弁理士法、新会則の下では、日本弁理士会の組織、機構が大幅に変更された。これらの新制度をその趣旨に沿って適切に運用していくことが求められているので、毎日が試行錯誤の連続である。
新制度推進
会員に関しても、特許業務法人、支所、事務所名称の規制緩和等、新しい制度が誕生している。このような新しい制度を定着させることを任務とする新制度推進委員会が設けられた。特に支所(従たる事務所)に関しては、知的財産サービスを全国の至るところで提供できるように、「依頼人に責任をもって対応できるように」すること(会則第31条)に注意しながら広めていきたい(現在、支所の数は42であるが、都市圏が圧倒的に多い)。
(8月22日 11号台風一過の静かな夜に記す)
監事会の監査のあり方をさぐる
監事会監事長 樺 沢 襄
はじめに
平成13年1月6日に弁理士会から日本弁理士会に生まれ変わり、常議員会の監査機能を引き継いで監事会制度が誕生し、佐藤一雄監事長が選任された初年度の監事会が発足したことはご承知のとおりです。
この3月に任期満了で退任された監事の補充も変則的にいずれも常議員から選出され,また,日本弁理士会会員以外からはじめての2名の外部監事が選任されて第2年度の監事会が構成されました。
例規上の監事会の役割
日本弁理士会会則には、監事会は、正副会長会の会務執行並びに資産の状況を監査する。また、資産及び会計の状況について外部専門家の意見を聴取する。また,会員は正副会長会の例規による許可の申請に対して行なった処分及び許可を取消し又は変更した処分について不服がある場合は、監事会に対し、調査の申立を行なうことができる。と規定されています。
さらに、日本弁理士会監査規則には、監査の対象として、正副会長会の会務執行状況、本会の資産、本会の会計、本会における支部の会務執行状況及び会計が挙げられ、さらに、これらの監査の方法が規定されています。
外部監事
幹事会の監査は、例規からみれば殆ど旧弁理士会の常議員の監査を踏襲したもので、大きな変化は外部監事制度を採用したことと思料します。
そこで、行政改革推進本部規制改革委員会の
「規制改革についての見解」(業務独占資格制度文抜粋)平成12年12月12日を長くなりますが引用させて戴きます。
業務独占資格の問題意識として次のことが挙げられています。
「公的資格制度は、国民の権利と安全や衛生の確保、取引の適正化、資格者のモラル向上等のため、厳格な法的規律に服する資格者が存在し安心できるサービスを国民に提供することが目的であるが、他方では、公的資格制度のうち業務独占資格は、企業の市場参入規制に相当する個人の特定の市場への参入を規制する側面を持つ。業務の独占、合格者の制限、受験資格要件などの規制が維持されることにより、新規参入が抑制されたり、競走が制限されればその弊害が大きい。また、業務の独占には供給責任を果たす義務が伴う。資格者の数が不足している資格については、資格者を増大させるとともに、業務独占の範囲を見直して当該資格の隣接資格者にも業務を認めていくことが必要である。」
また、強制入会制度の実態及び特色として次の事項を挙げています。
「…、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士の8資格では、法律により、資格団体の設立が義務付けられるとともに、資格者団体に入会しなければ当該資格者の業務を行うことができない強制入会制が採られている。」と、さらに、「強制入会制の主な特色は、Ⅰ)資格試験に合格して業務遂行能力があるとされた者であっても、資格者団体に入会しない者は業務を行なうことができない、Ⅱ)資格者団体が新規加入者の登録審査及び登録を行なう、Ⅲ)資格者団体が自ら会則を制定し、主務大臣がこれを認可し、会員には会則を遵守する義務が課せられる。Ⅳ)資格者団体は役員の選出を行なう、Ⅴ)役員の職務は資格者の品位保持と資質の向上及び報酬の決定である、Ⅵ)資格者団体は会則に違反した者に対する一定範囲の懲戒権を持つ、Ⅶ)資格者団体は非資格者の取り締まりを行なう、という点にある。これらの特色は、内外の競走を制限し、手工業者の経済的利益を守るための組織であった中世ヨーロッパの都市におけるギルドと酷似しており、…。このような強制入会制の下では競争制限的行為が行われ、価格が高騰したり、サービスの質が低下するとの指摘がある。」
そこで、外部役員任用の必要として、「強制入会制の下では業務独占という特権を与えられた者の行動は、利用者である国民及び関係行政にも大きな影響を与える一方で、競争制限的とみられる行為が行われていることは…指摘したとおりである。…利害を同じくする資格者だけによって意思決定が行われているという資格者団体の閉鎖性にも起因すると見られる。…したがって、強制入会制を採る各資格者団体は、資格者団体の使命と公共性・公益性の大きさにかんがみ、また、民間企業におけるコーポレート・ガバナンスの動向を踏まえ、資格者団体における適正なカバナンスを確保するため、資格者以外の者が資格者団体の意思決定過程に参画できるように外部役員を任用すべきである。」としています。
監査の現状
そこで、監査の現況をみますと、現在まで月1回
の開催で、内部監事と外部監事ともども旧常議員会の監査方法を踏襲して、例規に基いて正副会長会議事録、会計帳簿、会計伝票、証憑書類などに基いて詳細に監査を行なっております。
この監査には、外部監事の皆様は幹事会の監事全員が正副会長会議事録、会計帳簿、会計伝票などを精査していることに驚嘆され、また、外部監事の皆さんからは貴重なご提言を戴いております。
しかしながら、現状の監査は、例規上の制約があるとしても、旧常議員会の監査の踏襲の域を出ないといっても過言ではないと考えております。
監事会の今後の課題
強制入会制を採っている日本弁理士会では、強制入会制を採っており、弁理士を職業とする以上、会員は脱退の自由がなく、会の規律に従う義務があり、また、会費の負担の義務を負うものであり、会員のために、総会で承認された事業計画に基いた正副会長会の会務、予算の執行が適正なものであることを会員に担保できる監査が監事会に求められているものと思料されます。
また、利害関係のない外部監事とともに行われる監査は、正副会長会の会務の執行が適正であることを会員に対しては勿論、利用者である依頼者などにも担保し、透明性が高められるものと思料します。すなわち、外部監事は役員ではあっても、会の意思決定過程に関与できるものではありませんが、監査を通して、国民の権利の確保、取引の適正化、資格者のモラル向上等を担保できる弁理士制度が確立されるものと考えます。
それには、旧常議員の監査を踏襲するばかりでなく、監査の基準、監査のガイドラインなどの必要性を検討し、また、会務の執行の障害となることなく監査が踏み込める限界など、必ずしも正副会長会と対立構造としてはなく、正副会長会と協力して模索して参り、弁理士会員、利用者などのために、弁理士の地位の向上を図り、安心できるサービスを国民に提供することができ、国民に信頼できる弁理士制度の発展に寄与できる監査のあり方の確立に努めて
参る所存です。
最後に、外部監事の皆さん、監事の皆さんは大変に熱心に監査を務められ、これからの監査のあり方を確立できると思料しておりまして、日本弁理士クラブの会員の皆様のご支援を宜しくお願いします。
無用の組織か常議員会
常議員会議長 高 橋 三 雄
○序
昨年の弁理士会会則改定に際して、常議員会の存廃の議論があったことは記憶に新しい処である。
存廃問題が急に(と思われる)浮上したためか、又充分な時間がなかったためか充分なる議論を尽くさず、存続するに至ったが、その本質的な性格議論が為されなかったことは残念であった。
常議員会は、その性格を大きく変えたのであるから、その議論の中からでも、常議員会の目的なり性格がはっきりと浮かび上がらせ得たかったかもしれない故にである。
しかし乍、ともあれ新常議員会は走り出してしまっているので走りながら考えるしかない。
○ 常議員会の性格
4月9日第1回常議員会開催以来第2回常議員会、第1回~第3回調整委員会 第1回~第3回第1委員会、同第2委員会と開催し、第4回第1委員会、同第2委員会を開催し、常議員会のあり方について大幅に改革された常議員会の使命役割について大方のコンセンサスを得てその方向性を考えるべく努力している処である。
常議員会のあり方について改定の拠って立つところは、必ずしも明らかではないが、その職務権限の大幅な変更にその意図はうかがわれよう、即ち、その最大の変更は、監事を新設し、監査機能を有する監事会を設けた点である。
それは常議員会が審議機関と監査機関の二面性を有する点で機関としての性格に相反する機能を有せしめていたことによる性格的矛盾と云べきものであって、少なくとも一方においては、正副会長会と協力的な立法的な施策を行ない乍ら、自らも賛同是認乃至は推進した件について、これを監査するという自己矛盾とも言うべき性格付けであった故である。
勿論、自己の関与賛同した通りの会務執行が為されているか否かの点についての監査は了承される点があるが、性格的に異論があることは否めない処である。
○ 職務権限
又、今回の改正で従来の会則上に規定されていた下記の職務権限は廃止されている。
1.官庁に対する建議又は喚問の答申に関する事項(弁理士会則44の2 1項1号)
2.総会より委任せられる事項(弁理士会則44の2 1項1号50条2項)
3.理事の会務執行及び資産並びに会計の状況を監査(弁理士会則44の2 2項)
4.役員の辞任の承認(弁理士会則47条)
5.理事の会規による許可申請に対する処分、許可の取消、変更に対する再調査(弁理士会則43条)
6.臨時総会召集決議(弁理士会則51条)
7.同上議長召集(弁理士会則52条)
これを見ると一見常議員会の職務権限の縮小と見られることは当然であるが、監査を除いて実質的に行われた事例は少ない。
調査によれば、
○ 旧会則第43条 許可申請に対する理事の処分に関する再調査常議員会召集の記録なし
○ 旧会則第44条の2 官庁に対する建議又は諮問の答申
1.憲法改正に関し建議(S29.3.19)
2.改正特許法について、「権利範囲確認審判制度の存置」
国会、通産省、特許庁、内閣法務局、法務省、最高裁、東京高裁に建議の認証を求める件(S32.12.8)
3.特許局長官より諮問の万国工業所有権保護同盟条約改正 昭和7年9月22日常議員会上程
○ 総会より委任された事項の決議
記録なし
○ 旧会則47条 役員辞任の承認
昭和18年~25年 5件
○ 旧会則51条 臨時総会召集の決議
大正時代に1度
これらの記録を見ると先輩はよくやっておられます。
勿論、これらの職務権限は、例え実際の使用はなくても規定を置く処に意義があると云う考え方もある。又、これらを置くことによる正副会長会との平衡感を演出するという考え方もある。しかし、今回の改正は、実情に合わせた規定に改めたものであって、審議機関に徹する機構として構成されているものと肯定的に考えてもよいのではないだろうか。
○ 新たな職務権限
上記4項や5項については監事の職務権限に属するものとすることは問題があろうし、現にそうなっていない。現在はそれに対する対応は出来ていないのである。6項、7項については問題もあろうが、第1には常議員は選挙で、夫々100人もの支持者を得て選ばれた人たちであることを考えると、共同請求の場合よりもその合理性があると考える。第2には会則89条第2項共同請求の実施は仲々困難な状況を考えると残置しておいたほうがより実効があるのではないかと考える。
さて、審議機関として常議員会の役割は、
1.正副会長からの依嘱事項の審議
2.正副会長提出の会規、常議員会において必要と認めた会規の制定、改正又は廃止
3.委員会の設置
4.予算外支出、予算超過支出の審議
と定められており、1,3については従来と同じであり、2については常議員会の発議と云う点で新設と考えるのがよいと思う。4は新設の職務である。
従って、従来の職務権限から監査を除いた縮小された役割を担うのみの委員会並みの機関に堕したという考え方も出来るし、又その考え方は自然であるかもしれない。
それなら敢えて貴重な会費から資金を出して選挙までやる必要があるのか、選挙に使用されるエネルギーたるや単に一人の常議員のみならず、その選挙に携わる人々を考えると、難民キャンプを支援したほうが意義あるやも知れないと思える程である。
然し、それほどまでして存続させた常議員制度であるからには、単なる一常議員の名誉、所属クラブの勢力図確認で済むものであろうか。むしろそれは付随的、瑣末的事項であって大上段に振りかぶれば日本弁理士会のため、弁理士のため、延いては日本の産業発展のため、更に飛躍するならば、全世界の人のためでなければならぬ。(これは大事になってきたぞ!)多分会則制定に携わった人々はそこまで考えていた筈。
真実にその方々は考えていたか。
会則78条第3項には
常議員会は議長名を持って、正副会長に対して意見を述べることが出来る。
という規定がある。
これを素直に読むと、何の前提もなく、何の制限もなく、会務全般に亘り意見を述べることが出来ると思われる。
この3項に並ぶものとして、第1項には委嘱された事項の審議に必要な説明を正副会長に求めることが出来ることと、第4項において第1項各項の決議は遅滞なく会長報告の義務があるだけである。
この配列から考えると、審議の委嘱事項に限り、意見を述べることが出来るものと解釈され得る。
然し、これなら一般の委員会と異なる処はない。
この点について正副会長会は会則制定の際の説明において制約はないと言明している。
更に、旧会則において第58条は常議員会は理事これを召集すべし、但し従属の常議員会は議長これを召集すべしと規定し、第2項においては常議員会議長は常議員会の議決を持って理事に意見を提出する場合及び総会召集の請求を為すための決議を経る場合に限り、自ら常議員会を召集することを得としている。
従って、常議員会(議長名で)が自ら召集することは制限されていたのである。
これに対し、新会則においては、議長は何等の制約なしの召集が規定されている。
以上の各点から常議員会は、自ら会を召集し、会の事業(会則3条に規定)について自らの意見を正副会長会に提出することが出来ることは理解されよう。
この見解に基づき、冒頭に述べた如く根をつめて常議員会のあり方、意見の述べ方様について議論を行い、叡智を集めている処である。
勿論、正副会長会とも、この点につき話合をする心算であるが、先ずは自分達のある程度の考えを持った時点で討議をしたいと思う。
しかし、そうは云ってもそう長くは延ばせないので、近いうちに常議員会内のある程度のコンセンサスを得て近々に行いたいと思っている。
○ 結び
上記の如く常議員会は自らの意思において、弁理士会の会務全般について、正副会長会に意見を述べることが出来るのである。
従って、常議員会が真に弁理士会について、そのあり方について考えるならば、問題が提起され、その議論は深まり、組織として極めて強力な活動ができるのではないかと考えている今日此の頃である。
弁理士会のこれからの研修制度
研修所副所長 松 田 治 躬
1.弁理士会の環境の変化
弁理士法の改正が80年ぶりに行われ、業務の拡大と共に、現在の弁理士人数の倍増又は1万人増を見込み、試験制度も手直しされている。
業務は、「工業所有権契約等の代理」、「税関輸入差止申立の代理」、「仲裁センターの工業所有権等の仲裁・代理」及び「仲裁手続付随の和解手続の代理」等が追加・拡大されたが、従来業務の1~2%程度の拡大と考えられる。
この弁理士法改正に際し、国会の付帯決議として、
「弁理士の研修においては、新規業務に十分対応できるようにするとともに、弁理士の資質が十分に向上できるように努めること。」(参院)、
「弁理士の自己研鑽努力等を支援しつつ、弁理士試験における受験者負担の軽減が弁理士の資質の低下を招くことがないよう勤めるとともに、法務サービス分野における弁理士業務の拡大を踏まえた研修のあり方等について検討を進めること。」(衆院)の如く、「研修のあり方」が要請されている。
参院の「拡大業務に対応する研修」や、現在社会的に要請されている「電気・ソフトウェア・バイオテクノロジー・訴訟等の専門分野の高度の研修」は、職業として自己の名誉と引換えに行うため、社会的ニーズに従い自然に向上するものと考えられる。
従って、衆院の「資質の低下を招くことがないよう」なる研修が弁理士会の最も重要な責務であろう。
2.弁理士会の存在意義
この規制緩和の時代に「職業選択の自由」の例外たる規制として弁理士制度が維持されるのは、この
分野の業務が、専門知識を持った専門家による関与を必要とし、一般の人がこれを見分けて安心して依頼できることが必要だからである。
然るに、弁理士の業務範囲は広く、全ての分野で専門知識を発揮することは困難であり、試験合格後全く自己研鑽をしていない分野も存在している。
これは、運転免許を10年前に取得したペーパードライバーに、いきなり職業として運転を任せるに等しく、又、この免許が馬車から飛行機まで極めて広い分野であり、且つ、違反の取締りや、更新制度もない免許だからである。
従って、ある弁理士の資質は有能な分野の明示は勿論、逆に、非専門の分野も明示し、見分けられるようなシステムも必要で、この会員がなお非専門分野の実務を行うのであれば、最低レベルの資質を担保しなければ、弁理士制度の存在意義がなくなり、会全体の自殺行為となってしまうことになる。
現在行われている義務研修や、又、この後に行われるであろう二次改正の義務研修も、この最低を確保するための条件に過ぎず、その分野を標榜し、職業として利益を得る業務を行うのであれば、更なる自己研鑽を必要としている。
3.従来の弁理士会の研修
従来、弁理士会では、「実務総合研修」(新人研修)、「会員研修」、「会員継続研修」、「会員特別研究」等の研修会が行われていたが、一般会員には、「新人研修」と「一般会員研修」の二種類と受け取られ、「新人研修」以外の三研修は、研修所内の担当の相違に過ぎないようであった。
「実務総合研修」(新人研修)は、弁理士試験と弁理士実務が乖離しているに拘わらず、即座に開業可能な資格であるがため、最低限の実務の全分野を身につけさせることを目的とした研修会である。
「会員研修」は、一般弁理士の日常業務の実力アップのため、改正事項や審査基準または専門分野の時宜に適した研修を行う研修会である。
「会員継続研修」は、少数で専門を深めるために行われる、研究会的な研修会である。
「会員特別研究」は、民法や民訴の法律的素養を高めるため、一般弁理士を対象に行われ、法改正を睨み、その準備として開催されていた。
70名を越える研修所委員のボランティアを始め、100名を越える講師による膨大な努力のによる研修の実施ではあるが、「新人研修」は、多岐に亘る専門の厳しい実務を考慮するとあまりにも上っ面を撫でた研修に過ぎず、教える側にとっても不満の残るものでしかない。
又、一般研修も、いずれも強制ではなく、受講歴も明らかではないため、自己が直接取り扱う専門分野は参加するが、事務所で業務を行っているにも拘わらず、非専門分野の場合、補助者任せが多いようで、弁理士会の死活に係る必要なボトムアップに関し、費用(努力)対効果が的確であるか見直す必要も感じられる。
4.これからの研修
専門家集団であるが故、規制緩和や職業選択の自由の例外として残され、試験制度の簡略化によって人数の増加が明らかとなった現在、弁理士会自らの手で最低レベルの保障を社会に対し行わなければならない責任が重要となっている。
又、国会の付帯決議で委ねられた、新たに拡大された業務範囲に関する研修は、全会員に課された問題であり、これを専門分野に取り入れる者については殊更、従来との差異を明確にしなければならず、これと同様の差異を従来の各専門についても依頼者のため、鮮明に明示すべきものと考えられる。
先ず、最低レベルの格上げとして、弁理士会の研修は、従来の「実務総合研修」をより基礎的なものに限定し、各科目5~10時間程度で随時行ない、その講師歴・受講歴を各会員の履歴に明示し、その専門性の度合いを明確にする。
高度な研修に関しては、当面、特許庁・発明協会を始め、民間の研修会・講習会を含めテーマを要望すれば営利的に行ってくれる団体も多く存在するため、それぞれ自助努力に任せ、会が推薦することも可能である。
従って、弁理士会は、法改正により拡大された業務範囲の最低範囲を主に、他団体が開催してくれない弁理士倫理や、落ちこぼれを作らない最低レベルの研修が最も必要となるものと考える。
尚、これらの場合、推薦した講座や、弁理士会の研修における講師や受講者の履歴等を申請に応じ掲載することも、専門性の明確化を行う材料になるものと考える。
5.ついでに
独禁法上、例外として残された弁理士制度において弁理士会の「強制加入」廃止を標榜する者もいる。
10年に1回程度の国による更新試験制度でもあるなら別であるが、社会が要望する特定レベルの職業集団を維持するには、弁理士会が全弁理士を見渡したボトムアップの研修が今後も必要であると考える。
弁理士会中央知的財産研究所について
中央知的財産研究所長 稲 木 次 之
弁理士会中央知的財産研究所(以下研究所という)は、平成8年(1996年)4月1日に発足し、6年目に入っています。初代の樺澤所長が研究の企画・運営の方法その他一切のノウハウを作成されたので、それに従って現在は運営を続けている状態です。
1.研究課題およびその現状は次の通りです。
「不正競争防止法第2条第1項第1号、同第2号による商品形態の保護について」安原正義副所長
この研究課題はすでに終了し、本来ならば皆様のお手元に報告書が届いている筈であり申し訳なく思っております。
現在は不正競争防止法の特定の事項が我々の業務範囲に入ったので、「商品形態」に限定せずに、商品表示全般につき再度研究に入っております。
「バイオテクノロジーに対する法的保護のあり方・明細書の開示・保護の範囲を中心として」本庄武男副所長
近畿支部を中心とした会員および学者の方々に研究をお願いしております。課題の性質上、勉強から始めておりましたが、現在は本格的な議論に入っております。
「均等論」木戸一彦副所長
沢山の判例が出ており、それらを各研究員が担当して説明し、それを全員で議論する形で進めております。現在は最終段階に入っており、本年度末には報告書が出る模様です。
「ビジネス関連特許について」三好秀和副所長
ビジネス関連特許の出願に付き特許庁の判断が数多く出ており、それらも議論に取り入れながら進めており、本年度末には報告書が出せると思います。
2.研究所についての問題点
研究所の報告書につき紙で出さずに弁理士会のホームページに掲載してはどうか、との提案があります。費用の点からも、保存のためにも良いことであると思います。しかし、著作権法から考えると著作人格権として同一性の保持、公表の自由があり(義務研修でお勉強したばかりで恐縮ですが)誰でも自由に見られ、ダウンロードできる便利さは、返って問題を生じるおそれもあります。従って、現状では従来通り、本として出版するのが良いのではないかと考えます。
先日、ある委員会から呼び出しがあり、研究所を法人化することはどう考えるか、との質問がありました。私は、個人的には研究所のみで法人することは無理がある様に思いました。若し、財団法人とするのであれば、誰かが巨額な寄付をして、それを基として研究所を運営するのが普通であり、財産がなければ出発できないことだと思います。
しかし、研修所などと一緒に独立した機関とするのであれば、あえて反対する理由もない、とも申し上げたと記憶しております。
3.お願い
研究課題は会員の参考になるもので学者の方々にも興味のあるものが望ましく、それを選択するのはむずかしいので、会員の方々に是非ご提案をお願いします。また、外部の先生方、および内部研究員(会員)の人選につき情報をお寄せ下さるようお願い申し上げます。
(以上)
支援活動は弁理士がする
知的財産支援センター
センター長 竹 内 三 郎
○3年目
当センターはこの4月で発足3年目に入りました。篠原泰司前センター長はじめ運営委員の方々の2年間で組織が確立され、活動が軌道に乗りました。正副センター長、部長を含む運営委員の任期は2年で、半数交替し、3年目の活動に入っております。
○支援の性格
当センターの目的は、会則第150条に示されています。「知的創造活動並びに国内外の知的財産権の取得及び活用に関する支援」を行うことにより、「知的財産権制度の発展に貢献」することです。
「支援」はどう行うのか。それは弁理士活動そのものと思います。では弁理士のみならず日本弁理士会(支援センター)が弁理士活動をするのか・・。まさか会(センター)が弁理士と競争関係になる如き図式はあり得ないことで、そのような思想自体生じ得ない話です。
センターの活動は、弁理士の活動を行き渡らせるための窓口となることだと理解したいと考えます。窓口を通して行われる弁理士活動をどう理解するかについては、その切り口は色々ですが、自発的か義務的か、有償か無償か、という観点でみることもできると考えます。
○自発的・義務的
そもそも弁理士の活動が充分に行き渡り、社会の要求に対応できている態勢を仮定すれば、さらに加えて、会が弁理士活動の窓口となるのは好ましいことではないと考えますが、異なる現状下では、会としての対応努力が必要であり、会の存在理由の一つがそこにあると思われます。対応システムは利用者が利用しやすい形、すなわち成果が見えやすい形であることが必要です。センターはこのようにして弁理士自らの意思で創設されたものであると理解します。センターへの支援要請は会への支援要請と同義です。
「支援」活動は弁理士の本来的業務ということではないので、弁理士に支援を強制すべきかどうかは議論があるとしても、上記のような経緯、そして、会の存在は好ましい弁理士制度の維持に役立っていること、弁理士はすべてこの制度に乗って制度の恩恵を受けていることなどを勘案すれば、すべての弁理士は支援活動をしなければならない義務的意識を少なくとも持つべきであると考えます。
○有償・無償
弁理士活動が有償であることは他の士業活動も同様です。センターが窓口となるとしても弁理士が行う活動は弁理士活動そのものであることに変わりはないのであり、その原則は当然有償であってよく、支援要請者に有償を心得ていただくことでよいものと考えます。
センター=会という公益的組織に支援を要請すること自体に、弁理士個人への依頼以上の期待が内在しているものですが、この期待に対する還元は、センターが要請者の意向も考慮して支援すること自体で,或いはその成果で果たされていると考えてよいものと思います。ただし公益性を有している以上、配慮はあってよいものと考えます。
なお、常設の或いは弁理士の日全国一斉の無料特許相談、特許出願等援助制度、無料講演会などは、それが支援の基本にあるものということではなく、センターとしての無料を謳った個別企画と捉えてよいものと考えます。
○弁理士の既活動とセンター活動
個々の弁理士がどこでどのような活動をしているかは、センターではなかなか把握しにくいのです。関わりが年々変化する場合は一層困難になります。
弁理士活動のあるところから、支援要請が出た場合にどうなるでしょうか。支援要請の内容にもよりますが、何らかのバッティング状況が生まれる可能性が大いにあり得ます。
しかし、これはセンターの支援目的とするところではありません。このような状況を生じさせないために、センターでは支援要請者の実情把握を心掛けていますが、弁理士活動状況の把握ができていれば、問題回避がしやすくなります。特に支援要請を必要としている大学、TLOなどの把握が緊要です。
このことからも、幾度もデータベース造りのためのアンケート調査を実施しております。弁理士各位には是非ご理解ご協力をお願いいたします。
なお、センターが支援活動をすべきところは原則的には、弁理士活動のないところ、公的関係での要請を必要とするところ、個人レベルでの対応が難しいところなどであろうと思われます。
○ センターの活動現況
センター組織は、センター長、副センター長、運営委員(部長、副部長を含む)により、5つの部を構成し、運営委員はいずれかの部に属し、部活動が中心となって運営されております。
5つの部は次のとおりで、列記した活動が中心となっております。
1.総務部=センターだよりと年報の発行、パンフ の修正増刷、支援員研修会の開催、支援員データ ベースの整備とアンケート、支部地区部会との交流、支援員登録証発行の検討、各部間の調整等
2.出願等援助部=出願援助(給付、貸与)申請の審査(12年度申込55件)、改善検討
3.第1事業部=常設特許相談室の運営・改善、弁理士の日全国一斉無料相談(34箇所)の運営、相談員との意見交換会、講演会セミナー2回、他団体等への相談員・講師の派遣、発明展等への審査員の派遣、これらのマニュアル作り、問題点の検討等
4.第2事業部=大学、TLOへの支援活動、島根県への支援事業の実施、マニュアル作りと問題点の検討、講師テキスト作成の検討等
5.第3事業部=中小企業・ベンチャー支援の検討、全国の助成融資制度の継続調査と活用法の検討、中小企業向けQ&A集作成の検討等
弁理士各位には、センター活動へのご理解と同時 に、支援活動への積極的な参加をお願いいたします。
日本知的財産仲裁センターについて
知的財産仲裁センター
副センター長 宍 戸 嘉 一
日本知的財産仲裁センターは、1998年4月1日に工業所有権仲裁センターとして事業を開始してから3年半が経過しようとしています。2001年4月からはセンターの名称を「日本知的財産仲裁センター」と変更して、センターで取り扱える紛争の対象も、著作権をも含む知的財産全般にまで拡大され、知的財産に関する紛争を専門に処理する日本で唯一の紛争処理機関となったわけです。
その間、初代センター長に山川正樹先生、3年目のセンター長に田中正治先生が就任され、センターの顔としてその役割を立派に果たされました。今年度は吉田研二先生が、実際にセンターの事業を動かしている運営委員会の委員長を勤めておられます。
事業拡大と言えば、本センターは、WIPOの調停・仲裁センターにおけると同様に、日本ネットワークインホメーションセンター(JPNIC)のJPドメイン名の紛争処理機関となり、2000年10月19日からJPドメイン名の紛争処理業務を開始しましたことご承知の通りであります。また、本センターに限ってではありますが、弁理士法の改正により工業所有権、導体集積回路の回路配置及び特定不正競争に関する仲裁手続の代理が弁理士の業務に取り込まれ、弁理士は、これまで工業所有権に関する事件ですら補佐人の地位にとどまっていたのを代理人として調停・仲裁事件に関与することができるようになりました。
昨年度は、広報部会を担当させて頂きましたが、ドメイン名の紛争処理に対するマスコミの感心の高さには驚かされました。業務開始と同時に、朝日、
日経、読売、テレビ、その他IT関連の雑誌社等の取材攻勢にあい、うれしい悲鳴を上げたのを昨日のように思い出されます。JPドメイン名の紛争処理業務を扱うこととしましたおかげで、センターを広く知って頂くことができたと思います。
それにもかかわらず、本来の調停・仲裁事件の申立件数が日を追っても増えてこないのはどうゆうことでしょうか。そう言った疑問が運営委員の先生方からも出てきています。そこでその要因について今年度早々の運営委員会で議論がなされました。設立間もない事もあって、調停・仲裁に関する情報不足によりセンターの活用について十分ご理解頂けてないのでないかとか、大企業が何か理由があってセンターを利用して頂けないのではないかとか、事務局の充実が図られていないからではないかとか、それはそれは様々な意見が出ました。その中で認識の一致を見ましたのは、申立手数料が他の仲裁機関の手数料に較べて高いと言うことでした。その主な要因は、高額な調査手数料(特許・実用新案20万円、商標・意匠10万円)にあるということで、その納付規定を凍結し、申立時に支払って頂く手数料を相当に減額することとしました。このことにより、中小企業等利用者の側から見て、センターが一歩使い易いものになったと言って頂ければ幸いです。
センターの利用を阻害していると考えられる点がもう1つ有ります。それは、現行の基本規定の制約から行われていない調停人・仲裁人名簿の公表の点です。本センターは、国家が関与する裁判所と違って私的な紛争処理機関でありますから、どのような資質や経験をもちあわせておられる調停人・仲裁人
候補者をセンターが擁しているかが、センターの信用とか評判を勝ち取るために最も重要な尺度になります。どんなにすばらしい調停人・仲裁人候補者を擁していてもこれを公表しなければ、怖くて使えない、逆を言えば安心してセンターを活用できないと言うことに繋がってしまいます。是非とも、名簿の公表の実現に向けて努力をしたいと思います。この点、JPドメイン名紛争処理におけるパネリストは、公表が義務付けられている関係から、本センターのホームぺージのウエブサイトで公表しております。
今年度は、そのような信頼性の拠所であります調停人・仲裁人候補者(弁護士、弁理士、及び学識経験者)の名簿の改定時期(3年毎)に当りましたので、日本弁護士連合会及び日本弁理士会からの推薦の手続を経て新しい候補者名簿が作成されました。それによりますと、法律の専門家であります弁護士先生は96名で、経歴からみますと、知的所有権に係る事件に主として携わっておられる弁護士先生、知的財産関係を担当され、裁判所を退官されて弁護士登録をされておられる先生方です。弁理士の先生は173名が名簿に登載されております。特許、意匠、商標事件を専門とする先生方又特許についてはバイオ技術、半導体技術、通信技術、コンピュータ技術と言った、各技術分野に精通していて、尚且つ弁理士として長い経験を有しておられる先生方です。日本弁護士連合会からは、当初、日本弁理士会からの調停・仲裁人候補者の人数について多すぎるとのご批判がありました。しかし、先に述べましたように、工業所有権では、専門分野が細分化しているため多勢を要するのは当然であるということで、今ではその点について十分理解をして頂いております。最後に、学識経験者は、41名で、主として知的所有権を専門とされております大学の先生方です。
調停人・仲裁人の中立について、少し触れてみたいと思いますが、これは、特定な申立事件との係わりの中で、調停人・仲裁人の中立性がどのようにして確保されるのかという問題です。センターの運営委員会では、調停人・仲裁人の選任に当っては、申
立事件に係る技術分野、申立内容を勘案して、その事件にふさわしい先生方を名簿の中から選び出し、申立人・被申立人との間に利害関係があるかどうかを直接確かめた上で、選任することとしております。利害関係については非常に厳しい運用基準を設けて、これを実行しております。
当事者自らが調停人・仲裁人の選任を希望する場合は、当然のこととして自らが事件に対する中立性を念頭において人選される事になります。自分に有利だからこの人を選びたいというのでは公平な第三者とは言えないわけです。
調停人・仲裁人は、関与する事件の両当事者に対してどのような態度で調停・仲裁に臨まなければならないのかと言う問題があろうかと思いますが、とにかく両当事者に対しては中立で有りつづけること、さもないと当事者から信頼してくれない、信頼して頂けなければ、調停における和解は期待出来ませんし、仲裁における公平な判断も期待出来ません。
当事者自ら選任の希望が実際にはどれだけあるのかとお聞きになりたいと思いますが、それは、過去、仲裁事件1件だけでした。あとは全てセンターの運営委員会に選任を任され手続規則に従ってセンターが選任の手続を取りました。
最後に、調停・仲裁申立事件及びJPドメイン名の紛争処理申立事件の状況に付いて触れたいと思います。調停・仲裁事件については、今年9月現在申立総数は17件でそのうち2件が仲裁事件、他は調停事件でした。現在継続中の事件は5件です。他方、JPドメイン名の紛争処理申立事件では、1年足らずで13件の申立があり、1件を除いて全て片付いています。
弁理士法の改正による弁理士の仲裁代理の獲得、センターの使い易さに対する手数料の軽減、事務局の充実等により、兎角言われてきました、申立状況の低調さの要因であった障害は、ほぼ取り除かれ、またセンターのホームページの開設、ドメイン名紛争処理と関連してのマスコミ取材等による広報を通してセンターの存在が認識されつつあると思います。
この上は、弁理士の先生方に日本知的財産仲裁センターを信用して頂き、知的財産紛争に遭遇した折りにはセンターに先ず目を向けて依頼者に調停・仲裁に対する十分な情報を与えて頂きこれを利用して頂く番がきたのではないかと考えています。センターに対するご支援ご協力をお願い申し上げます。
平等主義について思うこと
日弁常任相談役 佐 藤 一 雄
昨今の日本は改革の掛け声ばかりが高々と叫ばれているが、社会全体は何となく閉塞感に覆われて依然として突破口を見出せないでいる。明治時代に日本が近代国家に脱皮して以来、欧米先進諸国に追いつき、追い越せのキャッチフレーズの下に官民総力を挙げて大発展を遂げてきたことは広く知られている。
この間、日本は2回にわたって長期不況(1920年―1950年、1990年以降)を経験しているが、この両者に共通するキーワードは制度疲労であるといわれている。40年も同じシステムを使っていると、当初は有効な制度も次第に時代の要求に合わなくなり、遂にはマイナス面が強調されるためである。第2次世界大戦後は、1950年の朝鮮戦争による特需景気から重化学工業を中心に日本の高度成長が始まった。日本経済は2度のオイルショックと円高ショックにも耐えて1990年代に入るまで世界史的に見ても奇跡的な経済成長を遂げた。
しかし、この40年間に経済体制そのものが制度疲労を起こしており、他方政治家の多くは官僚と業界団体の癒着に抵抗し得ないばかりか、自らの利益追求のために族議員になりさがっている。今こそ、日本の経済社会の体制を根本的に改革する必要があるのに、既得権擁護勢力が改革推進勢力よりはるかに大きいということである。規制緩和にしても、行政改革にしてもその進展ぶりはきわめて遅い。
戦後日本における行き過ぎた平等主義はあらゆる規制緩和を阻止し、競争を否定する強力な精神的基盤になっている。一口に平等といっても、これには機会平等と結果平等があり、真の民主主義社会で大事なのは前者の機会平等である。教育の場において勉学する機会は万人に対して平等に与えられなければならない。しかし、スタートラインについて走り始めた後は各人が自己の能力を存分に発揮して優秀な成果をあげることは自由である。その成果を揃えるために各個人の能力発揮を押さえ込むようなことがあれば、それは決して許されるべきことではない。また、大事なことは各個人の出した優秀な成果については周囲の人々がこれを正しく評価してその成果をお互いに尊重しあう環境を作ることである。小学校低学年の時代からこのような環境で教育を受ければ、将来大学、企業に進んで研究開発に従事するようになったとき、お互いの研究成果を尊重しあい、しかも社会的にも適切な評価がなされて認められるという理想的な社会が醸成されよう。
多種多様な人間社会において、人間一人一人の持つ能力、才能を不発に終わらせるほど無駄なことはない。今日の日本の閉塞感を突破するためには、このような能力、才能が十二分に発揮できるような社会環境を構築しなければならない。出る杭はたたけ方式の均一思考の教育からはのびのびとした独創性豊かなアイデアは生まれてこない。話はそれるが、小学校の運動会で50m徒競走の順位を決めるのが差別扱いで、負けた者がかわいそうということで順位をつけないという話を聞いたことがある。このような教育では非行少年、少女が生まれても仕方がないと思う。人間誰しも得手、不得手があり、その得意な分野で能力を発揮して一等を取って褒められれば、嬉しいものである。また新たな勇気が出てくる。走ることが速い子が能力を存分に発揮できるのは体育の時間であり、運動会なのである。このような場において適切な評価を与えて褒めることが彼等に自信を与え、友達関係も良くなろう。この事例は彼等の能力発揮の場を奪うもので機会平等のルールにも反するものと思われる。
勉強のほうでも劣等生が傷つくことを避けるために優等賞は消えてしまったと言われている。今では競争否定は学校では当たり前のことになっている。これも戦後日本の行き過ぎた平等主義の産物と思われる。
日本の平等主義の考え方は所得配分にも見られる。よく企業の平社員と社長の所得差についてアメリカと日本とで比較されるが、日本の経営者の方が圧倒的に低い。企業の中では平等という価値基準が最重要とされ、同期入社はすべて同じ給与とされてきた。また、従業員は企業に一生を託して運命共同体の一員といわれてきた。さすがに最近では、この意識は若干崩れてきていることは事実である。
平等主義自体は人間社会の生み出した英知であり、立派な生活原則であるが、戦後日本の平等は機会の平等から結果の平等に重点が移され、行き過ぎた平等主義や悪平等がはびこるようになった。努力した者が正当に認められず、努力しなくてもある程度の生活が保障されるようになると、国民のモラルにも悪影響が出てくる。社会主義国が次々と破綻をきたし、国の大改造を迫られたのも結局は悪平等が蔓延し、各個人の持つ能力、才能が発揮されない閉塞社会を招いた結果と思われる。
日本は明治以来の発展過程で比較的短期間に発展途上国を経験し、先進国の仲間入りを果した。発展途上国には先進国のモデルがあり、このモデルを目標として目標実現に努めさえすればよかった。しかし、先進国は自ら目標を創造しなければならず、発展途上国には真似のできない高度な技術やソフトウエア技術を創造しなければならない。そのためには、世界中から優秀な頭脳が日本に集まってくるような環境を創設する必要がある。21世紀を切り開く優秀な頭脳が勿論日本からも輩出するよう努めなければならない。
そのためには、小、中、高を始め大学の教育の場、企業、官庁などあらゆる分野での構造改革が必要である。ここで、これまで日本のあらゆる仕組みに浸み込んできた旧来型平等について国民一人一人が考え、見直すことが必要である。ある個人の能力や才能を妬むような社会では先進国の一員として21世紀を乗り切る活力は得られない。