日本弁理士クラブは、PA会・春秋会・南甲弁理士クラブ・無名会・稲門弁理士クラブの5会派で組織されています

日本弁理士クラブ幹事長挨拶

日本弁理士クラブ幹事長 西島 孝喜(春秋会)

 平成27年度日本弁理士クラブ幹事長を務めさせていただくことになりました西島孝喜です。
 ひとことご挨拶させていただきます。

 ご承知のように最近の弁理士を取り巻く環境はさまざまな観点で急激に変化しております。
 最近発刊された弁理士白書によれば、現在登録された弁理士の数は1万人を超え、平成25年(2013)年度の弁理士登録者数は平成14年(2002)年度の2倍の勢いで増えつづけております。
 
 また、昨年弁理士法が改正され、弁理士使命条項が改正されました。
 平成27年(2015)4月1日施行の改正弁理士法第1条は「弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。」と規定しております。
 要するに、弁理士の使命は、「知財の専門家として制度の適正運用に寄与し、日本の経済産業の発展に資する」ことであります。 すなわち、弁理士の第1の使命は「知財の専門家として制度の適正運用に寄与すること」であります。
 
 この弁理士の第1の使命を果たすためには、その前提として、まず、「知財制度の適正な運用がなされているか」という検証が必要です。
 現状をみると、日本国内の特許出願件数の減少に歯止めがかからず実際の新たな特許出願は30万件を割っているとの報告もなされております。実用新案出願件数も低下の一途をたどっています。意匠出願も欧米、近隣諸国に比べて少なく、改正法のもとでは更なる国内出願の減少が懸念されます。
 このような日本の現状は制度の適正な運用がなされているとは到底言えない状況です。弁理士の第1の使命を果たすためには、まずこの現状を変えなければならないことは明らかです。
 すなわち弁理士が、知財の専門家として制度の適正な運用に寄与するためには、制度の適正でない運用を変えることが前提となります。
 適正でない制度の運用には何があるか、については、まず、実用新案制度の運用が挙げられます。現在の実用新案制度は平成5年改正法で当時の審査遅延打開策としていわゆる無審査制度が導入されました。出願件数は改正以前は10万件以上ありましたが、改正後減りつづけ平成25年(2013)年度では7千600件程度まで減少しています。実用新案制度は制度自体が有名無実化しております。中国、韓国、ドイツの制度等を研究し、ユーザーが使いやすい適正な制度に変えることが必須の条件です。実用新案制度の活性化は日本の知財活性化の切り札であると考えます。
 
 また、適正でない制度として104条の3の存在があります。この規定は多大な労力と資金、時間を費やして獲得したユーザーの知的財産権の行使意欲を削ぎ、制度活用意欲を減退させ、喪失させるものです。知財制度はそもそも天才の火に油を注ぐものでなければなりません。ユーザーの権利行使意欲に水をかけるような規定は適正な制度ではなく、明らかに知財の活性化と逆行するものです。
 また、期限徒過等の場合の権利回復措置についても現状の運用は、ユーザーを失望させ、制度活用意欲を削ぐだけでなく、制度に対する憎悪を誘発する要因になっております。米国の運用では期限を徒過してもユーザーの意志によるものでない限り救済されます。そもそも知財制度の利用はユーザーの意志及びその負担を前提に始まるものですから、ユーザーの意向を尊重する制度運用を期すのは知財の活性化の原点であります。
 
 知財制度は、納税制度等の強制的な義務制度とは異なり、ユーザーの自由意志に全面的に依存します。制度の性格上ユーザーの発意、活用意欲がなければ知財制度は機能せず、制度が衰退することは明白です。現状はそのようになりつつあり、知財制度の衰退は日本の経済産業の衰退と一体です。 知財の利用価値が上がるほどユーザーの夢はひろがり、制度活用意欲が高揚することは間違いなく、したがって、知財の価値を高めるための施策を提言し、行動することも弁理士の第1の使命に含まれるものと考えます。
 
 次に、弁理士の第2の使命は、「日本の経済産業の発展に資する」ことであります。
 日本人は第2次大戦という悲惨な戦争での敗戦を経験し、敗戦後の地獄のような貧困から先進国へと驚異的な復興を成し遂げました。当時戦勝国であった先進国に追いつけ追い越せの精神、及び我慢強さ、緻密さ、真面目さ等の日本人特有の気質とが相まって、高い技術力が生み出されました。天然資源の乏しい日本が世界で生き抜いて行くためには、日本の戦後復興の原点を探っていけば明らかなように、上記の日本人の気質及び頭脳に依存するしか、選択肢はありません。しかし、同時に知財制度という国際的かつ公平な制度の存在があり、かつ日本人がその知財制度の特質を有効活用したからこそ、日本の戦後復興がなし遂げられました。上記のように日本の経済産業が低迷している現状において知財の活性化は日本再興の生命線です。知財を活性化し、世界最高の知的財産立国を目指すしか日本が世界で生き残る道はありません。
 
 そして、弁理士は知財活性化の出発点となる発掘現場を担う立場にいることは誰もが認めるところです。弁理士は知財の発掘現場において、あたかも金脈を掘りあてようとするかのような夢と情熱をもって、ユーザーと一体となって有用な知財の掘り起こしに努めることが必要です。知財が生まれようとしている現場において弁理士が様々な観点でユーザーのために尽力することにより、力強い知財が発掘され、知財発掘現場が活気づきます。力強い知財が生み出されれば、知財制度への求心力が高まり全体として知財の活性化が促されます。知財の活性化が日本の産業及び経済の発展に資することは間違いありません。
 
 このように、弁理士が知財発掘現場においてユーザーの知財制度活用意欲を啓発するように行動し、産業に対する貢献度の高い結果物を特許庁、裁判所に提示していくことが日本の知財活性化の出発点です。このような知財発掘現場での弁理士の行動は、知財活性化を促すものとして間違いなく特許庁及び裁判所から賛同が受けられるものと考えます。また知財協、中小企業のユーザーからも共感が得られるものと考えます。そして、このような知財活性化サイクルを実現することにより、「日本の経済産業の発展に資する」という弁理士の第2の使命が達成できるものと確信します。
 今年度日本弁理士クラブの活動に全力を尽くします。皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。