会報第24号・遙かなる完乗

[会 員 だ よ り]

遙かなる 完 乗

山 田   勉(無名会)

 完乗? 辞書を見てもワープロを叩いてもそんな言葉はなく、本誌を読まれている真っ当な皆様方には縁のない言葉と思いますが、私のような鉄道ファンには心地よい響きを持つ言葉であります。明細書調にいうと、「完乗とは鉄道の完全乗車をいい、さらに詳しくは旅客列車が走行する全ての線(JR 及び/又は私鉄)に乗ることをいう」となります。

 現在の日本には約2万 km の JR と約7千 km の私鉄がありますが、単純に距離だけを見ると新幹線で東京~新大阪を25往復すれば済むため、比較的容易に完乗できるようにも思われます。ところが、そのなかには一日に数本しか走っていないような線もたくさんあるため、全ての線に乗るにはかなりの時間とそれなりの費用と効率的なプランニングをするための知恵や研究を要します。また、一旦完乗しても新線が逐次開業するため、完乗のタイトルを防衛し続けるのは結構大変です。そんなわけで、完乗は鉄道ファンにとって目標が尽きることのない「遊び」であり、タイトルのように「遙かなる完乗」となるわけであります。

 私はといえば、高校2年生で当時の国鉄を完乗し、大学2年生で私鉄を完乗しました。学生時代には大いなる暇と若さ・体力があったため、夜行列車や駅寝(駅舎の中で寝ること)を駆使して宿泊費を切りつめ、また食費を切りつめることで、比較的少ない費用で(総計百万円程度と思います)、完乗を達成することができました。旅の途中での貴重な経験と共にそれなりの達成感を得ることができましたが、その時点で一旦情熱が尽き、弁理士試験を目指したこともあって、8年間ほどは新線が開業してもほとんどフォローをせずに放置しておりました。

 弁理士試験に合格後、充実する一方で殺伐とした生活を送っている中で気が付いてみると、全国にかなりの数の新線が開業しており、再び完乗への意欲が沸き上がってきました。現在の私は「新線+JR の完乗」という新たな目標を掲げて奮闘中です。

 ここで学生時代との相違点を幾つかあげると、1.暇がないので道中に飛行機や新幹線を使うことが多くなり、2.体力がないので夜行列車や駅寝ではきつくなり、3.ビール代が嵩むようになりました。以前に比べると費用がかかるようになったため、修行に近い「旅」から物見遊山的な「旅行」になりましたが、その分精神的なゆとりが生じ、それなりに楽しんでいます。

 現時点での達成度は6~7割程度といったところでしょうか。乗りにくいところがたくさん残っているため、まだまだといった感じです。また今後も新線の開業予定が目白押しで(東京に近いところでは9月26日に営団南北線・都営三田線、12月12日に都営大江戸線等)、そのフォローも大変です。

 数年のうちには都合三度目の完乗を達成し、その後しばらくは仕事(?)や育児に打ち込み、また四度目の完乗を目指し、といった具合に、日本の四季折々の変化を感じながら「遙かなる完乗」を楽しみたいと思っています。いつの日か銀河鉄道に乗れる日を夢見ながら…。

 というわけで、皆様方とご一緒させていただく場合にも、「エヘヘ、ちょっと都合があって」と抜け出すことがあると思いますが、大方の場合は未乗区間の消化に努めております(決してヘンなことはしておりません)ので、大目に見てやって下さい。

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