会報第24号・最近の中国特許・商標代理人

[会 員 だ よ り]

最近の中国特許・商標代理人

黒 瀬 雅 志(春 秋)

変化する代理人制度
 中国の代理人制度が大きく変化している。
中国の特許制度は、1985年に施行され今年15周年を迎えた。特許出願の代理人は、専利代理人と呼ばれ、現在約5,800人が登録している。また、商標代理人は、専利代理人とは別の資格として与えられており、約800人が登録している。いずれも、年1回の国家試験に合格しなければ資格を得ることはできず、試験は年々難しくなっている。
 中国の代理人制度の特徴は、国から特別に与えられる渉外代理人資格を有する事務所のみが、外国との業務を扱うことができるということと、国有の事務所が多いということだ。特許制度発足当時、わずか3箇所であった渉外特許事務所は、現在23箇所に増加し、後2年以内にすべての事務所が渉外事件を取り扱うことができるようになる。
 商標代理に関してはさらに開放が進み、すでに90近い事務所に渉外代理権が与えられ、ほぼ自由化している。
 また、CCPIT(中国国際貿易促進委員会)専利商標事務所、CPA(中国専利代理(香港)有限公司)、上海専利事務所など、当初からの大型国有事務所は、来年には国有からパートナーシップの形態に変わる。
 これらの一連の動きは、事務所間に競争を促し、代理人の実力を向上させようというものであり、現在の中国の経済改革の方向と一致している。

代理人の実力向上
 上記の渉外代理権の開放を可能にしているのは、代理人の実力が、ほぼ国際レベルに達したという中国の自信の現れでもある。
 中国特許代理人が、他の国々と異なるのは、その技術的専門性の高さと語学力である。特許代理人になるにはまず、技術系大学を卒業しなくてはならない。
 また、渉外代理権を得るには、必ずかなりのレベルの語学力を要求される。技術系大学を卒業し、外国語が堪能というのは、それだけでも相当のエリートに属するが、そういうエリート層が特許代理人を目指すのは、その職業に対する魅力に他ならない。発展途上にある工業国においては、特許代理人は、その収入、社会的ステータスにおいて人気のある職業であるが、中国の場合にはさらに、国家政策として特許を重視しており、海外に行けるチャンスも多く、若くて優秀な人材が集まってきている感がある。
 毎年一回の資格試験が、今年は10月に行われる。受験資格としてまず、2年以上の実務経験があることが要求される。試験問題は、法律の外に、明細書を読んでクレームを作成するという実務試験、国際条約、外国語など多岐にわたる。約2,000人が受験し、300人ほど合格するが、実力伯仲で結構厳しい。商標代理人の試験は、今年は9月に行われる予定。こちらも英語の試験などはかなり難しい。
 最近は、代理人の試験に合格した人たちが、弁護士試験に挑戦するのがはやっている。特に渉外代理事務所で働く代理人に多いが、知的財産制度の将来性に注目し、少しでも業務範囲を広げたいというのがその理由のようだ。弁護士約11万人、日本ほどではないが、合格することは毎年難しくなっている。

WTO加盟で自由化が加速
 WTO加盟により中国は国際経済との結びつきを一段と進化させると共に、国内経済体制の本格的な自由化が進展する。サービス業の自由化に伴い、特許代理人など、資格業の規制緩和、開放が進展する。すでに、弁護士の対外開放は進展しており、100を越える外国の事務所が、北京、上海などに事務所を構えている。日本の法律事務所も、すでに10以上が進出している。また一方、日本で働く中国弁護士、特許代理人も徐々に増加している。
 中国の代理人と付き合ったことのある人たちは、彼らの伝統的な交渉力の上手さに加え、専門性の高さ、強い向学心などで強烈な印象を受けることが多い。
 資格業の自由化は、今後世界的規模で進行するであろう。当然国際マーケットにおける資格業の競争も激化するであろうが、日本の弁理士にとっての将来の競争相手は、米国弁護士よりも、中国の代理人たちではないかと予想している。

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