会報第24号・日本弁理士会へご協力を

[ ご 挨 拶 ]

日本弁理士会へご協力を

弁理士会会長 村 木 清 司

 会長に就任してから半年が過ぎました。

 この間の、日本弁理士クラブの先生方のご支援とご協力に対しお礼を申し上げます。特に、弁理士法改正、会則改正に関連した委員会活動に積極的に参加・ご支援頂いたことに大変感謝をしています。

 新しい弁理士法が来年の1月6日に施行され、名称も「弁理士会」から「日本弁理士会」に変わります。この法律改正は、弁理士にとり、また弁理士会にとり大きなターニングポイントになると考えています。今回の改正により、我々の業務の中に知的財産に関する紛争処理が新たに加わり、知的財産に関する代理人として大きく前進したと考えています。また、侵害訴訟代理業務も視野に入り、知的財産に関する総合的な専門家・代理人としての確立もそう遠くない将来に見えて来た気がします。

 将来を踏まえて、現在、行っておくべきことが幾つかあります。それについて述べさせていただきたいと思います。

 一つは、法律は変わったが、それに見合った業務が果たして実際に行われるかと言う点です。特に、新規業務に関しては、社会から相応に評価されることが必要です。そのためには、充分な研修とそれに裏打ちされた業務が実際に行われることが必要です。新規業務の中でも、工業所有権仲裁センターにおける仲裁に関しては、弁理士が実際に関与して、解決し、仲裁に関する弁理士の役割を社会から認識されることが重要です。その上で、一般的な裁判外の紛争処理(ADR)への役割が実現するものと思います。裁判所における侵害訴訟代理の問題はその先にあります。新規業務には国内事件に限らず外国との関係いわゆる国際事件が含まれます。これらの業務は政治折衝や、弁護士会との交渉で実現するものではなく、業務の実践と実績がその実現をもたらすものと信じています。さらに、紛争処理に関しては、単に解決のための法律知識と実務の習得だけではなく、職業意識と倫理が強く要請されます。その意味では、研修と自己研鑽が今まで以上に厳しく要求されます。

 次に、弁理士制度が制度として広く認識されるためには、単に大都市、大企業だけの制度であってはなりません。そのことは、弁理士法が改正される際の国会審議で何度も質疑応答が繰り返えされています。この時の審議経過を是非熟読して頂きたいと思います。社会貢献として知的財産教育への協力、TLO 等への積極的な参加、地域産業への貢献などを通して社会に貢献して行くことが必要です。弁理士会では地区問題連絡協議会を設けて、地域的な問題を調整するとともに、知的財産支援センターを通して社会貢献を図っています。また、今回、民間業者による不当な知的財産権(著作権)登録をなくすために弁理士会が業者の告発に踏みきったのも、弁理士(会)としての社会的な使命を認識しているからに他なりません。

 さらに、弁理士としての倫理が今以上に厳しく要求されます。

 色々な懇談会において、特に裁判所などの司法の側から、弁理士が依頼者側に寄り過ぎて客観的な判断をしない傾向があると言う指摘を受けています。これは、事実ではないと思います。ただ、弁理士と言う業務が知的財産の創生から権利取得まで依頼者と継続的かつ深く係わることから、依頼者側に寄り過ぎているように見えるのかも知れません。しかし、鑑定や、仲裁人としての判断、さらに今後、和解などを通して事件を客観的にみる訓練が一層必要とされることも事実です。さらに、利益相反など、外から見て弁理士としての業務の公正さや客観性を疑われるような事件の受託や解決がされることがあってはなりません。これらのことは、弁理士として真摯に受けとめるべきことと考えています。今後の会員研修において倫理面の研修も行う予定です。

 また、弁理士会(弁理士)には、職業団体(人)としての独立性と積極性が要求されます。本年の10月から、訴訟代理権などに関して、弁護士会との話合いが始まりますが、ほかにも司法書士会、税理士会、行政書士会などとの話合いや協力が行われます。それぞれの業務の隣接域での調整が必要であり、しかもこれには国際的な流れを考慮しておく必要があります。弁護士会からは、弁理士会は行政に近過ぎると批判されます。行政からは、弁護士は例外的な職業集団であり、他の士業が弁護士会と同じレベルでものを考えるのはおかしいと指摘されます。もちろん、政治に近過ぎることには問題がありますが、一方で、日本の経済を動かしているのは政治であり、政治の場において知的財産保護の立場から弁理士会の意見を主張することも必要です。このような観点から、弁理士会としての自覚の下に他の団体、行政や司法、政治に対し知的財産制度の重要性を積極的に主張して行く予定です。

 このような試練を通して、日本の弁理士会が、国際的にも日本を代表する職業団体として認識され、評価されて行くものと信じています。

 新しい弁理士制度の確立のために皆様方の一層のご理解とご協力をお願いします。

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