会報第24号・外に向かって

[ ご 挨 拶 ]

外 に 向 か っ て

弁理士会副会長 亀 川 義 示

 従来、我々弁理士の大部分は、基本的には事務所において依頼者から提示のあった発明内容を明細書に仕上げるなど生活の糧となる仕事を行い、月に1回ないし数回弁理士会の委員会活動に参加し、年に数回クラブの委員会と日弁の委員会に参加するという活動を行ってきました。

 勿論、従来から特許相談のような対外的な活動も一部行われてはいましたが、従来の活動の基本は、弁理士会内といういわば内向きの活動であったということができると思います。

 一方、新弁理士法の審議等の過程の於いて、弁理士会の社会貢献的な対外活動が高く評価され、これが新弁理士法の成立に大きく寄与した一つでした。

 思い起こせば一時的な不況は何回かありましたが、戦後一貫して大きな成長をとげて来た我国の経済が曲がり角を迎え、このような局面を打開して新たな成長を遂げる為には科学技術創造立国を目指す他はないと、国は政策決定を致しました。

 そして、こうした科学技術創造立国の政策完遂の為には新技術の創生と共に、創生された技術の知的財産権による保護が不可欠であると認識され、更に知的財産保護の為には弁理士の活動が不可欠であることが広く認められ、このことが新弁理士法の成立に結実しました。

 新しい技術の創生は、既存の大企業、中小企業は勿論のことですが、特にベンチャー企業、改組される大学に多くのものが求められています。社会は、「寄らば大樹の陰」という安定指向の人材よりも、自から創業しようというチャレンジ精神に富んだ人材を求めています。

 我々の新弁理士法が科学技術創造立国の政策完遂に向けて重要な位置づけをされている限り、我々もこれに応えるべき義務が生じたといえます。

 我々は、依頼のあった発明について立派な明細書等を作成するといういわば消極的寄与を越えて、ベンチャー企業、大学等における技術創生の過程における指導、相談を通じて知的財産権による的確な保護にまで関与することが求められております。そして、かかる活動をこれまで以上に大々的に行って下さいと要望されています。

 これからの弁理士は、事務所において立派な仕事をすることは勿論ですが、それだけで足りるものではなく、社会に向って種々の社会貢献的な活動を行うことが必要とされます。

 こうした活動は直ちに成果が現われるという性質のものではないと考えられますが、我々の地道な努力なくしては次代の知財の拡大、充実はあり得ないでしょう。

 このような社会貢献的な活動への関与は面倒なので、事務所で仕事だけをやっていれば足りるとする考え方は、もう許されなくなっていると考えられます。そして、こうした活動をすべきことは、新弁理士法の成立を願い、更なる弁理士法の第2次改正を願う我々自身の行動に根ざす義務ではないでしょうか。

Top > 会報第24号・外に向かって